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梅の色を追うのではない。ただ、生かしきること|梅染 山本晃

“梅染友禅”までの長い道のり。

友禅の世界に飛び込んだのは、山本さんがまだ10代の頃。手描き友禅のすべてを学ぶうち、次第にある疑問を感じるようになる。「貴重な自然の繭からできた絹に、なぜ科学染料を使うのだろう…」。独立後は自身のスタイルを確立するために天然染の世界に活路を求め、出合ったのが室町時代に広まった染色方法“梅染”だった。「よくよく調べると、私が長年、携わってきた友禅染のルーツということが分かったんです。これだと思いました」。しかし、技を伝授してくれる師匠がいるわけもなく、古い文献を頼りに試行錯誤を繰り返す日々。ようやく日の目を見た梅染友禅だったが、「世間がイメージする梅の色とは異なるものだった」と当時を振り返る。

そんな折、訪れた転機。それはいつものように自宅近くにある梅の名所、北野天満宮にお参りした時のこと。剪定(せんてい)されていた紅梅をふと

見ると、切られたばかりの枝の断面が鮮やかな赤みを帯びている。長らく追い求めていた淡い紅色が現実のものとなったのは、そのすぐ後のことだ。

環境に優しい、エコな染色。

「いくら新鮮な枝が必要だからといって、そのために切るようなことはしません。梅染は環境を破壊しない、とてもエコな染色なんです」。色止めと発色に必要な媒染剤に劇物が使用されることも少なくないなか、色素を抽出した後の枝を燃やした灰汁を媒染剤として再利用するなど、使う材料のすべてを天然にこだわる。現在は日本にたったひとりの梅染友禅の第一人者として後継者を育成する一方、梅染友禅にふさわしい環境を求め、自然ゆたかな滋賀県の高島市に新たな工房を構えた。「梅染の色は自然からのいただきもの。だから、どの色も優劣なく素晴らしい。色を追うのではなく、すべてを生かしきる。それこそが私の使命だと思っています」。

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    • 1. 鮮度のいい紅梅の枝を削ると現れる、鮮やかな紅色。梅染を始めた当初は古木を使用していた。
    • 2. 「一番、神経を使いますね」。優しく、労わるように。回数を分けて染材に浸し、色を重ねていく。
    • 3. 染めたばかりの絹のスカーフ。控えめで品のあるピンク色には、女性の肌を美しく見せる効果も。
    • 4. 桐箱に納められた産着。梅染は生まれたばかりの赤ちゃんの肌にも優しく、消臭効果も期待できる。
    • 5. 山本さんが種から育てた藍や紅梅の枝に自生する苔を使った染色など、梅染以外の作品も展開する。