「百人一首」とは、通常、「小倉百人一首」のことを示し、鎌倉時代後期に、京都・小倉山の山荘で藤原定家がまとめた私撰和歌集です。彼は、飛鳥時代以降の貴族や歌人たちの間で詠まれた、5・7・5・7・7の31文字で成る和歌から各人の優れた作品を一首ずつ、全部で100首の和歌を取り上げました。内容は、恋心や生活についてなど非常に幅広く、その時代に生きる人々の様子を知り、光景を思い巡らすこともできます。
そして、室町時代の後期には歌道の入門編として、江戸時代には絵入りの「歌がるた」として庶民に広まり、遊戯としての役割を担うようになりました。
現在では、中学校や高校などの古典の授業で題材にされたり、100枚の読み札と100枚の取り札の200枚から成る「百人一首かるた」として正月に遊ばれたり、全国で百人一首競技の大会が行われたりと、日本人に日常に馴染み深いものとなっています。
一般的な百人一首の遊び方
複数人で競います。
畳などの床に、100枚の「取り札」をバラバラに並べます。この「取り札」には、和歌の31文字の後半の14文字「下の句」しか書かれていません。
読み手役は100枚の「読み札」を持ちます。この「読み札」には31文字の和歌がすべて書かれており、これを一枚ずつ読み上げます。
競い合う人は、読まれた和歌の「取り札」を素早く見つけて取りますが、和歌の31文字の前半の17文字「上の句」を聞きながら「下の句」を連想できると取りやすくなり、有利になります。
100枚分が無くなったら終了し、最も多く札を取った人が勝ちになります。
自然との関わり、人間の営み、男女の恋など、様々な想いが詠われる百人一首から、有名な歌を数首取り上げてみます。
「春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山」
- もう春は過ぎ、いつのまにか夏が来てしまいました。香具山には、あのようにたくさん真っ白な着物が干されているのですから。
- 「実際に白い着物が干されていた」、「山に積もった雪を白い衣に見立てた」などの説がありますが、何れにしろ、自然の移り変わりや人々の営みを女性らしく詠んでいる歌です。
「これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも
あふ坂の関」
- これが、あの有名な(東へ)下っている人も都へ帰る人も、ここで別れては、またここで会い、知っている人も知らない人も、またここで出会うという逢坂の関なのだなあ。
- 「逢坂の関」で互いにすれ違う人を見て作ったと言われており、人と人との出会いと別れを詠った非常に有名な一首です。
「あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む」
- 夜になると、雄と雌が離れて寝るという山鳥だが、その山鳥の長く垂れさがった尾のように、こんなにも長い長い夜、私もまた一人寂しく寝るのだろうか。
- 山鳥を題材として、切ない恋心を見事に表現しています。
様々な遊び方がある百人一首かるたですが、ここでは、日本語がわからなくても可能で、2人以上でできる簡単な遊び方をひとつご紹介しましょう。
坊主(僧侶)の和歌が15首含まれていることを上手く利用しています。
- 1.100枚の読み札を重ねて裏返して置きます(置いた札を「山札」といいます)。各参加者が一枚ずつ取って表に向け、取った札に合わせて、下記a・b・cのいずれかを実行します。実行後は、次の人へと順番が移り、この流れを山札が無くなるまで繰り返していきます。
- - 男性が描かれた札を引いた場合、そのままその札をもらう。
- - 坊主が描かれた札を引いた場合、手持ちの札を全て山札の横に置く。
- - 女性が描かれた札を引いた場合、山札の横に置かれていた札を全てもらう。
- 2.山札が無くなったら終了。手持ちの札の枚数が最も多い人が勝ちになります。