盆栽は、平安時代に中国から伝わった盆景をルーツとし、江戸時代以降に広く大衆に普及して発展してきました。海外でも“BONSAI”とそのままの発音で呼ばれ、高い人気を誇ります。ただ植物を鉢に植えて観賞するだけではなく、自然の景色を模して成長させながら樹の形を整え、少しずつ作り込んでいく点が他の園芸趣味と大きく違う特徴。樹姿を整える剪定や開花・結実を促す培養管理など、目的に応じた栽培技術も確立しており、季節や樹種に応じた手入れを何年も継続して行います。古いものでは樹齢が数百年を越えるものもあり、“生きた芸術”とも言われます。一定の完成形はありますが、それに留まらず変化をしていく姿も魅力のひとつです。
盆栽の見所は、自然の美が凝縮された姿。大木を連想させる細かい枝分かれ、古木を連想させる剥皮(はくひ)した幹肌(みきはだ)、吹き付ける風を連想させる枝の流れなど、その表現は多岐にわたります。複数の盆栽を飾る席飾りや、床の間などに掛け軸や添え草などと一緒に飾る場合は、全体の調和も重要。他にも鉢の色や形の選択、飾り卓との相性など、観賞ポイントが多く奥の深い世界です。どのような景色を思い浮かべるかは、見る人によって千差万別。基本とされる表現方法や観賞の仕方もありますが、あまり難しく考えずに、まずは自由な発想で楽しんでみましょう。きっと見えてくる景色があるはずです。
盆栽と言えば、まず、松を思い浮かべる人が多いでしょう。黒松、赤松、五葉松など、松柏(しょうはく)盆栽と呼ばれるこれらの松の仲間の樹は、確かに盆栽の代表格。しかし、松だけが盆栽ではありません。紅葉や落葉後の枝振りが見所の 葉もの盆栽(※1) や、花姿・実姿を楽しむ花もの・実もの盆栽(※2)など、様々な種類の樹木が盆栽に仕立てられます。沖縄のガジュマルが盆栽に仕立てられた例も。20cm 程度のサイズに収めた小品盆栽や、手のひらサイズの豆盆栽というジャンルも人気があります。四季を通じて全国各地でたくさんの盆栽展示会が開催されているので、 機会があれば会場に足を運び、その素晴らしさに触れてみてはいかがでしょうか。
写真提供/月刊近代盆栽