温暖で湿潤な気候のアジア地域に自生分布する「竹」。木材が減少の一途を辿るなか、驚きの生長速度を特性に持つ竹は、環境に優しいエコな素材として近年、注目を集めています。日本でも、古くより竹は身近な植物として日本人の生活や文化と深い関わりを持ってきました。加工に適した高い柔軟性、そして耐久性にも優れた竹材の用途は幅広く、台所用品から建築資材まで。一方で松や梅と並ぶ縁起のいい植物としても重用され、新年が近づくと玄関に飾られる正月飾りの門松(写真右)にも、天に向かって真っ直ぐ伸びる青竹の凛々しい姿を見る事ができます。
竹は生活の道具に加工されるだけでなく、竹工の美意識を投影した美術品の分野でも独自の発展を遂げてきました。特に、茶道で使われる茶道具に竹の存在は欠かせません。季節の花を生ける花入れ、抹茶を茶入れから取り出すために使う茶杓、抹茶を点てるための茶筅(ちゃせん)などなど。茶の湯の祖である千利休も、竹が持つ素朴で侘びた風情を好んだといわれます。竹の種類は日本だけでも数百あるといわれており、なかでも胡麻のような模様が特徴の「胡麻竹」や亀の甲羅に似た形状の「亀甲竹」に代表される京都産の竹は“京銘竹”と呼ばれ、珍重されています。
青竹から艶のある飴色へ。時間とともに表情が変化するのも、天然素材である竹製品の面白いところ。高い抗菌・消臭作用を持つ竹は食器にも多く用いられており、竹の形状を生かした徳利や杯もそのひとつ。凛とした姿形だけでなく、竹の爽やかな香りとともに楽しむ日本酒の味わいは、また格別といえるでしょう。竹というと和のイメージが強いですが、洋室との相性もよく、部屋に置くだけで手軽にモダンな雰囲気を楽しむことができます。あるがままの姿を受け入れ、そこに美を見出す日本人ならではの美的感覚を、普段の生活に取り入れてみてはいかがでしょう。