「使うものなので、うつわはタフな方がいい」。迷いのない、強く潔い言葉。何気ないこの一言が、いまも強烈な印象として残る。
初めて会ったのは7年前。私たちの目の前に現れた彼は、まるで大学生のような若々しさで、実際の年齢を聞いて驚いたのを思い出します。現在は石川県小松市で作陶活動をされている陶芸家、岡田直人さんは、伝統的な九谷焼に現代の感覚を取り入れた『九谷青窯』で10年間もろくろをひいていたというキャリアの持ち主。九谷焼らしい端正な作風について聞くと、「逆に大らかなうつわを作れる人が羨ましい」と笑います。
「見た目も普通だし、どこかとっつきにくいけど、何年も使っていくと丈夫だし、いいよねと思ってもらえるモノを作りたい」「いろいろやりたいなぁと思うけど、やっぱり使いやすいモノを作ってしまう」。その言葉どおり、岡田さんの作る白磁はとても丈夫でシンプル。ランニングや食生活の管理など、会話の端々に垣間見えるストイックな性格は、使いやすさを追求した作品にも反映されています。きっと、妥協や適当という言葉が彼の辞書にはないのだろうな。とはいえ、神経質で刺々しいイメージまったくない。その証拠に、岡田さんのうつわに盛り付けると、料理がとても生き生きするのです。特に洋食との相性がいいようで、実際にパリには岡田さんの作品を使用しているレストランもあるそう。
好みの大きさが自由に選べるサイズ展開。それにお皿やボウルなどはスタッキングできるので、場所を取らずにしまえるのもいい。いち表現者である前に、生活者の目線に立った彼のうつわは、まさに “一生もの”なのです。
岡田直人 Okada Naoto
- 1971
- 愛媛県松山市生まれ
- 1992
- 京都嵯峨美術短期大学ビジュアルデザインⅡ科卒業
- 1993
- 愛知県立窯業高等訓練校卒業
- 1993
- 石川県九谷青窯入社
- 2004
- 石川県小松市で独立
現代の食生活に合った器を提案し製作中