扱う商品は、祭で着られる半纏(はんてん)や神社に行くと目にする神紋の幕や幟(のぼり)など。印染職人、児玉佳憲さんが属する『スギシタ』は通称、“紋屋”と呼ばれる。「例えば神社の使う幕の場合、50メートル先からも分かるように染め上げるのが私たちの仕事。目立ってなんぼの世界です」。紋を染める技法は印染(しるしぞめ)といわれ、同じ京都で染めでも、グラデーションがかった淡い色調が好まれる友禅染とは全てが異なる。特有の力強くはっきりとした線からは、揺るぎのない強い意志が伝わってくるようだ。
伝統的な日本の行事や風習と深い関わりを持つ印染。これらの技術を取り入れ、より身近なものへとアレンジしたTシャツ『絆』シリーズも児玉さんが手がけた商品のひとつだ。「自分たちが本当に着たいと思えるTシャツを試しに作ったのがきっかけ。今では商品として販売もしていますが、作っている本人が一番楽しんでいるかも」。粋で、遠くからも目を引く存在感のあるデザインは、さすがは紋屋。仏像や和傘といった日本らしいモチーフを選び、イラストに起こすのも児玉さんの大切な仕事だ。また市販のTシャツは顔料プリントで柄を生地の上に乗せ、色を固着させるのが主流だが、同社では「本染め」と「抜染(ばっせん)」という技法を使う。抜染とは、染められた生地の色を蒸気にかけて分解し、絵柄を浮き上がらせる技術のこと。顔料プリントのように色を重ねない分、肌触りが良く、着心地は実に滑らか。その証拠に、一度、着たら癖になり、追加購入する客も少なくないそうだ。
「Tシャツの次は印染のデニムを作ってみたい」と児玉さん。日本の伝統とともに生きる紋屋の新たな挑戦は、まだ始まったばかりだ。
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